友人からの電話で思ったこと

友人から久しぶりに電話がかかってきた。断わっておくが彼はごく普通のビジネスマンであって、彼が怒りをぶつけている医療については、まったくのド素人である。

 

「安曇さん、こんなことってあるんですかね。医者が信じられなくなってしまいました」

と、その知人は不満を爆発させた。

 

「実は、高齢の母親が脊柱管狭窄症という病気の疑いがありまして、3人の医師に診てもらったんです。そしたら、3人とも診断結果が違うのです」

 

脊柱管狭窄症は、加齢による脊椎骨の変形により、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、脊柱管の中から足へ向かう神経を圧迫することによって起こる病気のことだ。神経の圧迫は、下肢のしびれ、痛み、をもたらし、立っていたり、少しでも歩いたりすると症状が足に痛みがでて、横になってしばらく休むと症状が和らぎ、また歩けるようになるのが特徴的な症状だそうだ。80歳になる友人の母親の症状も全く同じだった。

 

ところが、医師の1人のは「MRI検査した結果、脊柱管はまったく正常で、なんら問題はない」といい、もう一人の医師は「年をとればこうなりますよ。我慢するしかありません」という。だが、ふたりとも足の痛みやしびれの原因が何かについては答えなかった。

 

業を煮やした彼は、3人目の医師に診断を仰いだ。

「結果は?

私は思わず聞いた。

「脊柱管狭窄症以外ありえない、と言うんだよね」

どうも、この医師の診断に不満がありそうな口ぶりだった。

 

「実はこの医師は問診と簡単な歩行テストとレントゲン写真だけで診断したんだ。昔ながらのアナログだよ。脊柱管狭窄ではないといった医師はMRIを使って診断したんだよ。しかも、地方の名医という評判の医師なんだ」

「おいおい形式で判断するなんて、君らしくないぞ」

と忠告すると、こんな返事が戻ってきた。

「その通りだな。それで思い切って3人目の医師にそのことを話してみた。そしたらこんな答えがかえってきた」

<この病気を診断する上で一番有効な方法は、実はレントゲン写真なんですよ。いまはなんでもMRIを撮ろうとする。一般の人もそう考えてしまう。しかし、違うんですよ。MRIは脊柱の中に別の病気があるか、神経の状態に異常はないか、といったことを調べるために、いわば補完的に利用するが筋なんです。高齢であることを考えれば、痛みの緩和を第一に考えて治療方針を立てましょう>

 

私は彼に聞いた。

「どの医師の診断に従おうとしているのかね」

3人目かな。病気を特定してくれたし、治療方針もはっきり言ってくれたからね。母もその気になったようだ」と元気のない声でいった。

 

私にはどの医師の診断が正しいのかわからない。だが、友人の話を聞いて、なるほどと思ったことがあった。診断(判断)は機械がするとのではない、ということだ。そして患者(クライアント)は、いまの辛さを何とかしてほしいのだ。「どこも悪くはない」とか「我慢しなさい」では納得しないのは当たり前だ。そして、最後に診断(判断)を受け入れることを決めるのは、患者(クライアント)ということも

 

私は彼に「きっとよくなるよ」といって、電話を切った。